将軍にも献上された“天下の美味”
北にそびえる鹿鳴越連山、南に面する別府湾に囲まれた、自然豊かな日出町。鹿鳴越連山にふり注いだ雨が長い年月をかけてろ過され、町内のあちこちに湧き出している。
江戸時代に建立した日出城の下、別府湾の海中にも清らかな水が湧き出す場所があり、そこで育つマコガレイが大変美味だったことから、日出産のマコガレイを「城下(しろした)かれい」と呼ぶようになった。
他の地域で漁獲されるマコガレイと比べ、外見的には肉厚で頭が比較的小さく、尾ヒレが広く角張っていないといった特徴を有し、江戸時代には庶民が食すと罰せられたことから、別名「殿様魚」とも呼ばれた高級魚だ。参勤交代の際に将軍家へ干物を献上し、4年に1度のうるう年には端午の節句に間に合うように生きた状態で江戸まで運ばれたと言われている。
食通を唸らせる、極上の味わい
清水の湧く海底という特殊な環境下で生育した「城下かれい」は、泥臭くなく上品な甘みを持つのが特長だ。刺身、唐揚げ、煮付けなど様々な料理にできるが、身の甘みが一番よくわかるのは刺身。かれいを刺身に?と驚かれる方もいらっしゃるだろうが、城下かれいは特別。薄造りにされた透明感のある身をいただけば、プリプリとした弾力ある食感とともに、独特の滋味深さと上品な甘みが口いっぱいに広がる。
政治家で美食家としても知られる木下乾二郎が昭和12年に著した、食通の原典として名高い「続・美味求心」では、「この魚の特徴は、肉質やわらかく色が純白で、少しの生臭さも無いことである。これを刺身にすれば光沢があって青水晶のごとく、香味に優れ、確かに魚介の首位に推すべきである」と称賛し、日本の名物料理八選に挙げたほど、希少かつ美味な魚なのだ。
極上の美味しさに舌鼓!城下かれいを楽しむ
城下かれいは4月から9月くらいにかけてシーズンを迎え、特に5~7月初旬頃が最も美味しい時期といわれている。旬の時期になると城下かれいを求めて、町は多くのお客様でにぎわっている。本格的な会席料理から手頃なランチセットまで、ご予算に応じて「天下の美味」を楽しめる。